NO.21「ばあちゃん」 (by たつや/男性)
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[21] ばあちゃん (たつや/22歳・男性/石川県金沢市)
私にはアルツハイマーのばあちゃんがいます。私が高校生の時くらいに次々と記憶をなくしはじめました。家族はどうしていいかわからず、ただ日常を日常としてす暮らすしかやり方がわからないときに、ばあちゃんが転倒して大怪我をしてしまったのです。鼻のあたりから血を流しながら、しかし、本人はまったく痛そうにせずにしていたので家族や近所の人もたいしたものではないと思っていました。でも、私が処置をしたところ明らかに傷口がパックリ開いていたのです。私はこの時初めてアルツハイマーになると痛みを感じなくなるということを学びました。それから医者に連れていき8針も縫うという大事態ということに家族や親戚一同で会議をしました。ところが会議中にばあちゃんが縫ってある糸を引きちぎるという行為に及んだのです。私はこの時、また傷口が開いてしまい血だらけになったばあちゃんに対してひどい恐怖を覚えました。その後、徘徊癖などの症状も出て共働きである私の家では対処ができないということになり病院に行くことになりました。私はあの血だらけのばあちゃんが怖くて中々お見舞いに行けませんでした。でも、私の記憶の中のばあちゃんに会いたくて意を決してお見舞いに行ったのですが…………すべてを忘れていました。私の顔どころか、家族全員を忘れ、『はじめまして』と一言いわれて私は家に逃げ帰りました。もうあの頃のばあちゃんはいない。あのばあちゃんは知らない人だ、と思うと涙が止まりませんでした。それから私が金沢大学医学部に合格し、金沢に引っ越して来ました(実家は大阪です)。勉強が忙しい、交通費が高いなどの理由をつけて長い間実家に帰らずにいました。ただ、あのばあちゃんに会うのが怖かったのです。あのやさしかったばあちゃんが私のことを忘れているという現実を受け入れたくなかったのです。でも、いつまでも帰らないわけには行かず、とうとう実家に帰りお見舞いに行くことになりました。どうせ私のことは忘れている。できるだけ自然に、なんとかこの時をやりこなそうと自分に言い聞かせ、ばあちゃんのいる部屋の扉を開けました。
『あら、たつや。こっちおいでこのお菓子あげる』
一瞬何を言ったのかわかりませんでした。アルツハイマーの人はたまに記憶が甦るらしいのです。言葉を理解したときには自分の顔が涙で顔がぐちゃぐちゃになっていました。あのやさしかったばあちゃんは、やっぱりこのばあちゃんなのです。もう怖いことはありません。これからは私は頻繁に実家に帰りばあちゃんに会いに行くつもりです。
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